保険でできて・おうちでできる予防矯正とMFT(口腔筋機能療法)
子どもの歯並びやかみ合わせの乱れは、「クセ」や「呼吸の仕方」、「姿勢」が関係していることが多くあります。
これらを見逃すと、成長に伴って顎の発育が妨げられ、将来的に大掛かりな矯正が必要になることも。
いしい歯科では、歯並びの土台を整えるトレーニング=「MFT(口腔筋機能療法)」を通じて、子どもたちの成長を活かした自然な矯正をサポートしています。
なぜ「予防矯正」や「MFT」が必要なの?
歯並びの乱れは、単に「遺伝」だけが原因ではありません。
実は、次のような日常のクセや生活習慣が大きく関係しています。
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口呼吸になっている
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舌の位置が低い(低位舌)
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飲み込み方にクセがある
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姿勢が悪い、頬杖が多い
こうした習慣が、知らず知らずのうちに歯列や顎の成長に影響を与えているのです。
だからこそ、早い段階で気づき、整えることがとても大切です。

MFT(口腔筋機能療法)ってなに?
MFTとは、舌・唇・頬などのお口まわりの筋肉を正しく使うためのトレーニングです。
これらの筋肉は、呼吸や発音、食べ方・飲み込み方、そして歯並びにも深く関わっています。
MFTを行うことで、次のような効果が期待できます。
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鼻呼吸ができるようになる
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舌の正しい位置(上あごのスポット)を覚える
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唇を閉じる力がつく
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正しい飲み込み方が身につく
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歯並びの悪化を防ぐ
お口の機能を整えることで、歯並びの根本原因にアプローチできるのがMFTの強みです。
おうち矯正ってどんなことをするの?
当院では、家庭でできるトレーニングを中心とした予防矯正を「おうち矯正」と呼んでいます。
器具を使わず、または必要に応じて簡易マウスピースを併用しながら、1日数分の習慣で歯並びを整える方法です。
代表的なトレーニングメニューは以下のとおりです。
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あげろーくん(舌を持ち上げる力を鍛える)
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たんたんめーたー(唇を閉じる力を強くする)
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あいうべ体操(呼吸と表情筋の改善)
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ガムトレーニング(舌の定位置を覚える)
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姿勢と呼吸のストレッチ
一人ひとりに合ったメニューを組み、親御さんと協力して続けられるように「宿題」もお渡しします。
月1回のチェックで進み具合を見ながら、無理なく続けていけるようサポートします。
よくあるご質問
【Q】何歳から始められますか?
【A】早い子では3〜4歳からスタート可能です。5〜8歳のうちに始めるのがベストです。
【Q】矯正装置は必要ですか?
【A】基本はトレーニング中心ですが、必要に応じて簡単なマウスピースを使うこともあります。
【Q】保険は使えますか?
【A】と診断される場合、保険が適用されるケースもあります。初回検査で判断します。
「口腔機能発達不全症」についてくわしくはこちらで解説しています。
「おうち矯正」の可能性と、知っておくべき限界
当院が提案する「おうち矯正」は、
子どもの成長力と日常のトレーニングを活かして、将来の矯正治療を予防・軽減することを目的としています。
しかし、すべての症例に適しているわけではありません。
始める前に、その特徴と限界もきちんと知っておくことが大切です。
「おうち矯正」のメリット
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成長を活かせる自然なアプローチ
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痛みがない・装置が少ない
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習慣を整えるので再発しにくい
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自宅で取り組めるためコストが抑えられる
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保護者と一緒に取り組むことで、生活全体の質が上がる
⚠️「おうち矯正」が向かない/限界があるケース
以下のような点にも注意が必要です。
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時間がかかる(数ヶ月〜年単位)
→短期的な変化ではなく、成長を伴った習慣の変化が前提 -
重度の歯列不正には対応できない
→骨格性の問題、大きなズレがある場合は専門矯正が必要 -
本人の「やる気」と「継続」が必要
→やらなければ効果が出ません。遊びや習い事と同じです -
親の理解と協力が不可欠
→「問題に正面から向き合う時間」「子どもの様子を見る時間」が必要です -
宿題(ホームワーク)ができないと効果は出ない
→指導内容を日常に落とし込むことで成果が生まれます
おうち矯正には「タイムリミット」があります
「ゆっくりでもいいから自然に整えてあげたい」
そう思う方も多いですが、歯列や骨格の改善には“成長期”というタイムリミットがあります。
とくに、
10歳をすぎて混合歯列後期(大人の歯がだいぶ生えそろう時期)に入ると、あごの成長はピークを過ぎ、舌や口まわりのトレーニングだけでは歯列や骨格の大きな改善は難しくなることがあります。
つまり、おうち矯正は“いつでもできる方法”ではなく、“今しかできない可能性のある方法”なのです。

一方で「口呼吸の改善」などには時間制限はありません
誤解してはいけないのは、
「すべての機能トレーニングに期限がある」わけではないということです。
たとえば:
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鼻呼吸の習慣化
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姿勢の改善
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舌や唇の筋力アップ
これらは思春期以降でもトレーニングで改善が期待できます。
しかし、歯列や骨格の誘導は“顎の成長がある今”でないとできないことが多いのです。
当院のスタンス
私たちは「おうち矯正=魔法の方法」とは考えていません。
むしろ、継続と家族のサポートがあってこそ効果が発揮される方法です。
ですから、以下のような方針で対応しています:
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必ず事前に「適応かどうか」を評価します
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無理のない目標設定を行います(1日数分)
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ご家庭で取り組めなかった場合も責めません。一緒にリカバリー策を考えます
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必要に応じて、他の矯正方法との併用も検討します
いしい歯科でのサポート体制
当院では、以下のような体制でMFT・おうち矯正を支援しています。
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舌圧・口唇閉鎖力・口腔内写真などの検査(初回)
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トレーニングメニューの個別作成
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月1回の再評価とフィードバック
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必要に応じて助産師・保育士・言語聴覚士などと連携
「楽しく、続けられる」ことを大切にしながら、成長に合わせたサポートを行っています。
気になったら、今がスタートのときです
「口がぽかんと開いているのが気になる」
「寝ているときに口呼吸をしている」
「話し方や食べ方にクセがある」
そう感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
ちょっとしたクセが、将来の大きなトラブルに繋がることもあります。
正しく知れば、未来が変わる
「おうち矯正」は、家族の協力で子どもの未来を変えられるとても優しいアプローチです。
その一方で、「やれば変わるが、やらなければ変わらない」シンプルな世界でもあります。
「今、やるべきこと」がはっきりしているからこそ
当院では、こうした時間的な背景をきちんと説明した上で、
お子さんの成長段階に応じた**「今しかできないこと」「あとでもできること」**を整理してお伝えします。
「やるべきことに集中し、やれることから始める」
この姿勢で、親御さん・お子さんと一緒に最適な選択をしていきます。
だからこそ、無理なく続けられる工夫と、継続の仕組み作りが重要だと当院では考えています。